学術出版の嘉粋堂
ホントのことを共有したい。

ホントのことを共有したい。


書名:Xスケープ・デザイン 上
著者:明土 真也
サイズ:A4 × 15 mm
ページ数:218(本文)
発売日:2025/7/15
価格:¥5,500(税込み)
送料:¥210
ISBN:978–4–911368–00–8
在庫:3部
音は、記号であり、様々な事物を指示し(指し示し)、種々の事象を誘引する。このような性質を「音の記号性」と呼ぶ。例えば、さえずりは、聴取者に対し、音源である鶯や春という時間などを指示し、美しいと感じる心理や声の方向に足を運ぶという活動などを誘引する。サウンドスケープとは、このような「音の記号性が作用する“場”」である。同様に「香の記号性が作用する“場”」はスメルスケープであり、「Xの記号性が作用する“場”」をXスケープと呼べる。本論の目的は、Xスケープ・デザインの理論的基盤の構築と実用の提唱である。これらを踏まえ、本論は、上巻(デザインや芸術の価値を高める)・中巻(音高の記号性と音高信仰)・下巻(雅楽や梵鐘に現われる音高信仰)、この3巻で構成し、本章では、本論の背景・目的・構成を示して、既往研究の整理と課題を共有する。
第I部 多面的な記号性と多様なデザインの対象と多層的なデザイン活動
第I部では、記号性を明らかにし、「Xの記号性が作用する“場”」である、Xスケープのデザイン、つまり、Xスケープ・デザインの理論的基盤を確立する。森羅万象は指示機能や誘引機能を備える記号Xであるため、Xスケープ・デザインはあらゆるデザインの分野に適用できる手法である。本論ではXを音とするサウンドスケープを代表例として説明するが、読者各自の分野で活用して頂き、それぞれのデザインや芸術の価値を高めて頂けたら幸甚である。
Xスケープ・デザインについて簡潔に述べると、次のようになる。まず、Xとは、指示機能と誘引機能を備える「外界記号」であり、五感や五官に対応する「光」「音」「香」「味」「触(触刺激)」など、森羅万象が該当し得る。Xスケープとは、「Xの記号性が作用する“場”」であり、Xスケープ・デザインとは「Xスケープ“場”のデザインである。ただし、これと交わりを持つ“場”もデザインの対象とする。」また、Xスケープ・デザインは、Xに備わる多面的な記号性がそれぞれ最適に作用するよう、多様な対象をデザインするというマトリクス的なデザインでもある。さらに、デザインという言葉は、調査・研究・造形・教育・宣伝・広報などの総称とも言え、多層的な活動を意味するため、各段階を通じてのXスケープ・デザインは3次元的な活動とも言える。そして、この多彩な活動を通し、外界記号Xの価値が最大限に高まることを意図して「Xの記号性が作用した結果」の総体的な最適化を図ることが、Xスケープ・デザインの要諦である。
第2章 記号性とその分類
本章では、指示機能や誘引機能といった「記号性」を明らかにし、音全体を記号性ごとに分類した後、この分類された音を定義する。また、これらを遂行すると同時に、「明らかに未完成の状態で放置している」「難解でしかも首尾一貫していないところが多くある」と評されるパースの記号論を、わかりやすく整理し、種々のデザインや芸術などに活用できるように仕立てる。そして、「記号性」という観点から、サウンドスケープを「音の記号性が作用する“場”」と定義する。また、音以外の記号についても同様に確認する。
第3章 記号性という観点からのXスケープ・デザイン
本章では、サウンドスケープの構成要素を明らかにして、サウンドスケープ・デザインをデザインの対象という観点から再定義し、その原理・対象・手法を明らかにする。また、本論でのサウンドスケープの定義である「音の記号性が作用する“場”」は、従来の定義に対し、定義自体が明瞭簡潔であるのみならず、構成要素が明確になり、実情にも合い、自己矛盾なく「五官の統合的な環境認識」を行える、これらを明らかにする。つまり、本章により、サウンドスケープ研究は、「環境全体を対象とする広い研究の中に組み込まれていかねばならない」とシェーファーが述べた、最終局面に導かれる。そして、サウンドスケープ・デザインの概念を五官や五感に対応する音(聴覚記号)以外の光(視覚記号)・香(嗅覚記号)・味(味覚記号)・触(触覚記号)などの記号Xにも拡張可能なことを示す。また、活動としてのデザインが「記号性の準備」であること、所産としてのデザインは「記号」であること、芸術を「芸術的価値のあるデザイン」と位置付けられること、これらを明らかにする。さらに、デザイン及び芸術の価値を高めるためのテンプレートにもなり得る、Xスケープ・デザイン・チェックシートの活用を提唱する。
第4章 報知音に対するサウンドスケープ・デザイン
本章では、第3章で述べたサウンドスケープ・デザインの手法を報知音に適用することを試みる。これにより、サウンドスケープ・デザインは、記号である報知音だけではなく、空間及び場所・聴取者・種々の触媒をデザインの対象にすることを定型とするため、あらゆる対象に対する網羅的なデザインの遂行を意図しやすくなることを示す。特に、触媒もデザインの対象であるという観点より、意味の触媒である文脈をデザインするという着想を得られることを明示し、種々の文脈に応じたサウンドスケープ・デザインを提言する。
第5章 作品に対するサウンドスケープ・デザイン
本章では、第3章で述べたサウンドスケープ・デザインの手法を作品の制作に適用した、小子による作品群を検証し、作品制作におけるシステム・デザインの手法の適用を提唱する。

書名:Xスケープ・デザイン 中
著者:明土 真也
サイズ:A4 × 20 mm
ページ数:298(本文)
発売日:2025/7/15
価格:¥6,600(税込み)
送料:¥210
ISBN:978–4–911368–01–5
在庫:2部
第II部 音高の記号性と音高信仰
第II部(中・下巻)では、「音高の記号性」の下位概念に位置付けられる「音高の記号性」、これに基づく「音高信仰」、これらを明らかにし、上古から江戸期・清代にかけての日本や中国のサウンドスケープ・デザインの神髄を読み解く。
「音高の記号性」とは、音高に備わる指示機能と備わると信じられた等の誘引機能のことであり、音の記号性の下位概念に位置付けられる。上古から江戸期・清代にかけての日本や中国において、人々は、陰陽・五行・十干・十二支により、事物を分類してその性質を理解しようとした。その対象は音階にも及び、五声には五行と十干、十二律には陰陽と十二支、それぞれが配当された。その結果、各音高にそれぞれの意味が付与され、正確な音高には世の中を理想化する「理想化の力」が宿ると信じられた。これにより、音高は、正確なら有益音、不正確なら有害音、このような価値を指示する(指し示す)こととなり、正確な音高の実現のために時間と労力をかけて雅楽器や梵鐘を開発・製造するなどの活動を誘引した。これらを人間(記号性受容体)の立場での活動として捉えると「音高信仰」とも言うべき呼称で概括できる。「音高の記号性」とは、このような、意味と価値の指示機能、「音高信仰」などの心理や活動及びこれらに付随する生理の誘引機能、これらの総称でもある。この「音高の記号性」の実態を識ることで、忘れ去られた歴史が明らかになり、保存、復古、啓蒙、観光資産としての活用、このような新たなデザイン活動を提唱できる。
第6章 甲骨占卜・陰陽・五行・十干・十二支と音高の記号性
本章では、「音高の記号性」に関し、中国の楽鍾と梵鐘の変遷を整理して日本の梵鐘との関係を考察し、甲骨占卜・陰陽・五行・十干・十二支における「意味」の指示機能、音高による「理想化の力」という誘引機能、日本における甲骨占卜・陰陽・五行・十干・十二支・「音高の記号性」の受容と展開、これらを整理する。そして、雅楽とは正確な音高により世の中を理想化することを目的とした音楽であることを指摘する。これらに付随し、次のことも遂行する。まず、執鍾は白川静(1910–2006)が指摘した「口」(サイ)であることを明らかにする。白川(2004, 296)は、「口」という文字について、甲骨文や金文では、耳口の口と見るべき文字はほとんどなく、祝祷(神への祈りの書)や載書(神を勧請して誓いを立てる盟誓の書)を納める器であり、古・右・可・召・名・各・客・吾・吉・舍・吿・害・史・兄・祝・啓・品・區・臨・嚴などは全て「口」(サイ)を含む形だと述べる(白川 2004, 296)。本章では、執鍾(サイ)が口(こう)と呼ばれ、それに施される饕餮文などが創造神話を象ることも明らかにする。また、梵鐘の起源は梁(502–557)にあることも明らかにする。さらに、十二律の音律導出法である三分損益法は、前521年から前505年頃までの期間に鄭(前806–前375)に伝来したピュタゴラス音律を中国化した机上の理論であることも明証する。
第7章 十二律の最確値と日本の律尺
本章では、1884年にアレクサンダー・ジョン・エリス(1814–1890)が測定した「雅楽平調」「俗楽平調子」「日本音楽十二律」と称される三つの音叉列の周波数を精査することで、日本雅楽十二律・日本俗楽十二律・日本音楽十二律の最確値を明確化し、神仙の音高を古律黄鍾に適用することで、古律の十二律の最確値を導出する。これにより、梵鐘の律などを精度よく判定できる。また、日本の律尺が、殷(前1600頃–前1046)で用いられた、曲尺であることも明証する。

書名:Xスケープ・デザイン 下
著者:明土 真也
サイズ:A4 × 25 mm
ページ数:372(本文+索引)
発売日:2025/7/15
価格:¥7,700(税込み)
送料:¥480
ISBN:978–4–911368–02–2
在庫:1部
第8章 楽における音高信仰
雅楽は正確な音高(音の高さ)により世の中を理想化することを目的とした楽であると考えられ、このことは典籍や遺物(楽器など)から読み取れる。雅楽で用いる雅楽尺八は、法隆寺と正倉院に伝来したが、その出自は未解明であった。本章では、遺物の律尺や音律、雅楽尺八に関わる典籍、これらを精査することにより、雅楽尺八が新たに提唱された八十四調理論の実用化のために開発された隋・唐の楽器であることを指摘し、隋・唐・日本の雅楽及び俗楽における「音高の記号性」への意識を明らかにする。これらに付随し、次のことも遂行する。一例として、尺八の起源は3世紀から4世紀あたりの亀茲にあってこれが五孔一節尺八の祖型であることを明らかにする。また、日本雅楽の十二律は、唐六調子(日本で整理された唐楽の六調子)で用いられる九律の音高と日本古来の神楽笛で吹奏できる三律の音高を統合して創られたことも明証する。その他、いくつかの事柄を明らかにする。
第9章 梵鐘に現われる音高信仰
本章では、梵鐘の法量や律、仏教に関する典籍、これらを精査することで、梵鐘を仏尊に見立て、梵鐘の律を衆生済度の力を備える仏尊の声(こえ)と捉える、このような思想があったことを明らかにする。具体的には、十二律のそれぞれに諸仏の律―例えば、阿弥陀如来の音は平調(ほぼE)など―を配当し、古律黄鍾には「諸行無常・是生滅法・生滅滅已・寂滅為楽」という意味も付与した。つまり、「黄鐘調の鐘」とは、日本音名黄鐘(おうしき。ほぼA)ではなく、古律黄鍾(こうしょう。ほぼC)の鐘であり、「無常の調子」とは、無常感が伝わる音ではなく、衆生を済度する力を備える仏の声である。また、これらに付随して、高麗尺が実在することも明証する。
本章では、第I部(上巻)と第II部(中・下巻)を踏まえた総合考察を遂行し、11の提言を行う。
以下は、『Xスケープ・デザイン』上・中・下巻において、記号論・サウンドスケープ・デザイン学・美学・音楽学・甲骨文・金文・青銅器・梵鐘・計量史・日本古代史・雅楽・俗楽・尺八の各分野に対して、のべ750を超える文献と数100の遺物を照合して導出した、120以上の新知見であり、通説の誤認を正すものも少なくない。